肝硬変の合併症対策

肝臓は多彩な機能を担っています。
ですから、肝硬変により肝機能が障害されたときに起きる合併症も多彩です。

 

特に重篤な合併症では、患者さんの予後に影響するため、
合併症対策が必要です。

 

(1) 腹水

 

腹水穿刺を行い、腹水の性状を鑑別します。

 

肝硬変の場合は、タンパク濃度が2.5g/dL以下の漏出性腹水です。

 

非代償性肝硬変に合併する予後不良の疾患としては、
特発性細菌性腹膜炎(SBP:spontaneous bacterial peritoniti)があります。

 

◎腹水の治療

 

・安静(肝・腎血流量の増加)

 

・食事療法

 

 肝性脳症の危険性がない:高タンパク質
 低アルブミン血症がある:分岐鎖アミノ酸製剤を併用
 肝性脳症がある:肝不全用成分栄養剤を併用(水分量、血糖値に注意する)
 食塩摂取制限(3〜5g/日程度に制限)
 水分制限(血清Na(natriumu:ナトリウム)値が
120〜125Eq/L以上の場合は、1000L/日

 

・利尿薬

 

 浮腫のある場合は0.5kg/日、浮腫のない場合は0.25kg/日の体重減少を目標とします。

 

◎肝性脳症

 

・アンモニア対策

 

低タンパク食にします。

 

・薬

 

抗菌薬や合成二糖類の内服によって、
アンモニアを産生する腸内細菌を抑制します。

 

分岐鎖アミノ酸製剤の投与でフィッシャー比を上昇させます。

 

◎肝不全

 

治療に抵抗的で、非可逆的慢性肝不全の場合、肝移植を適応します。

 

骨髄細胞療法(自己骨髄細胞が肝細胞に分化)。

 

◎消化管出血

 

・薬物投与

 

門脈圧を下げるため、門脈圧亢進症性胃腸症の治療として、
薬物投与をします。

 

・内視鏡検査

 

肝硬変患者の吐血・下血が全て静脈瘤破裂とは限らないため、
内視鏡検査による確認を必要とします。

 

・出血時の対応

 

食道・胃静脈瘤破裂などの出血時には、
SBチューブ挿入(圧迫止血)と門脈圧降下薬を投与します。

 

* SBチューブ(Sengstaken-Blakemore Tube:ゼングスターケン・ブレイクモア管)
 SBチューブは、2つのバルーン付きチューブで、
食道静脈瘤出血時に食道壁をバルーンで圧迫し、
緊急止血を行なう者です。

 

・内視鏡的治療

 

内視鏡的治療が奏功しない場合の止血に用いられます。

 

圧迫による食道粘膜が壊死する恐れがあるので、
48時間以内に圧迫を介助し、内視鏡的治療を行います。

 

内視鏡的治療としては、
内視鏡的硬化薬注入療法(EIS:endoscopic injection sclerotherapy)
内視鏡的静脈瘤決紮術(EVL:endoscopic variceal ligation)があります。

 

* 内視鏡的硬化薬注入療法(EIS:endoscopic injection sclerotherapy)

 

内視鏡的硬化薬注入療法(EIS)は、
食道内静脈瘤内または食道粘膜に、内視鏡観察下で硬化薬を注入します。

 

硬化薬の種類には、おもに界面活性剤である
オルダミン(モノエタノールアミンオレイン酸塩:EO)、
エトキシスクレロール(ポリドカノール)があります。

 

内視鏡的硬化薬注入療法(EIS)を行なうと、
下部食道粘膜が脱落し、食道粘膜が線維性の再生粘膜でおおわれるので、
食道静脈瘤が再発しにくくなります。

 

* 内視鏡的静脈瘤決紮術(EVL:endoscopic variceal ligation)

 

内視鏡的静脈瘤決紮術(EVL)は、
静脈瘤を専用の器具を使って結紮するものです。

 

内視鏡的硬化薬注入療法(EIS)と比べると、
硬化薬を使用しないので、薬剤合併症がありません。

 

また、手技が簡単であること、緊急時の止血効果に優れる等のメリットがあります。

 

このため、内視鏡的硬化薬注入療法(EIS)は、
食道静脈瘤出血時の第一選択になることが多いです。