肝硬変の患者さんへのフィジカルアセスメント

肝硬変の看護ケアでは、
症状を軽減するための対症療法が必要です。
そのために必要なフィジカルアセスメントが必要です。

 

黄疸

 

血清ビリルビン値が2〜3mg/dL以上になると、
皮膚の黄染が認められます。
これを顕性黄疸といいます。

 

しかし、日本人のような黄色人種は、
4mg/dL以上に達しても気づかれない場合があります。

 

黄疸をもっとも早く確認するためには、
眼球の結膜(白目の部分)を見るようにします。

 

* 眼球結膜の観察の仕方

 

 たとえば、右目の場合の観察の手順は、以下の通りです。

 

(1) 患者さんに左前下方を見てもらいます。
(2) 左母指で患者さんの上眼瞼を右上方に引き上げ、
   眼球の白目の部分を観察します。

 

腹壁静脈の怒張

 

正常の状態では、腹壁の静脈の怒張を認めることはありません。

 

門脈の狭窄や閉塞がある場合、血液が心臓に戻るときに
側副血行路を通るので、静脈が怒張します。

 

この場合は、門脈血は臍静脈を通り放射状に腹壁を流れ心臓に戻ります。
そのため、臍を中心に放射状の末梢に向かい、血管拡張があります。
これをメズサの頭といいます。

 

クモ状血管腫

 

上大動脈領域である顔面や前胸部などに、
1〜3mmの赤い発疹、クモが脚を広げたように放射状にひろがる血管が見えます。

 

中心部の血管が拍動していて、
拍動部の中心を圧迫すると、血管腫が消失したように見えます。

 

このクモ状血管腫は、肝機能低下によるエストロゲン上昇が
原因であると考えられています。

 

男性の女性化乳房

 

肝機能が低下し、男性でも少量産生される女性ホルモンの代謝障害が起こります。

 

すると、乳管の増加と拡張から男性の乳房が腫大します。

 

12ヶ月以上では著しい線維性組織が増殖するといわれています。

 

手掌紅斑(しゅしょうこうはん)

 

肝硬変ではなくても、飲酒家にはよくみられる症状です。

 

母指・小指の付け根を中心に手のひらが発赤します。

 

肝硬変ではクモ状血管腫よりは強くありません。

 

肝性脳症(羽ばたき振戦)

 

肝脳症の重篤度が進むにつれ、意識混濁の程度、睡眠状況、
多幸気分、せん妄、異常行動、羽ばたき振戦などの症状が現れます。

 

また、肝性口臭の有無もみられます。

 

羽ばたき振戦とは、両腕を体幹に沿って伸ばし、
手首を背屈させて保持し、手首から先が羽ばたくように
規則的に振るえるのが見られる症状のことです。

 

前腕を床やテーブルの上などに固定させて手だけを背屈させると、
手の羽ばたき運動がよく観察できます。

 

肝腫大と萎縮

 

肝臓の大きさの正常は6〜12cmです。
打診またはスクラッチテストで肝臓の大きさを推定します。

 

上縁と下縁の幅が肝臓の大きさです。

 

・打診

 

右鎖骨中線上を肺の共鳴音から腹部方向へ打診し、
濁音に変化した点を肝臓の「上縁」とします。

 

おなじく、右鎖骨中線上を腹部の鼓音から頭部方向へ打診し、
濁音に変化した点を肝臓の「下縁」とします。

 

・スクラッチテスト

 

右鎖骨中線上、肋骨弓の上部(肝臓の真上)に聴診器の膜型を当てて、
皮膚の引っかき音を聴診します。

 

頭方向から下部にひっかいていき、聴診音が大きく聞こえたところが、
肝臓の「上縁」です。
足方向から上部に引っかいていき、
同じく聴診音が大きく聞こえたところが、肝臓の「下縁」です。

 

フィジカルアセスメントでは、肝臓の拡大(12cm以上)では、
肝炎・肝腫瘍の疑いがあり、萎縮では肝硬変の疑いがあります。

 

肝臓を触診すると、ごつごつと硬く触れます。

 

腹部超音波で診ると、肝左葉は腫大し、肝右葉は萎縮がみられます。

 

腹水

 

・腹囲の想定

 

患者さんに仰臥位になってもらい、
膝伸展時の体軸に垂直な臍高の腹周囲を測定します。

 

・打診

 

濁音は腹水が貯留していることを示します。

 

仰臥位では、腹水は背中側にまわるので、
腹部中央は鼓音、腹部周囲は濁音になります。

 

側臥位では、腹水は下側に移動しますから、
上が鼓音、下が濁音になります。

 

・波動法

 

複数が貯留している場合は、腹部中央に手を置いて遮断し、
腹部の側部を軽く叩くと、反対側の腹部側部に波動画伝わります。

 

脾腫

 

患者さんに右側臥位になってもらい、
患者さんの左肋弓下に右手指先が入るように優しくあてます。
もう一方の手は、患者さんの背部を支えます。

 

深呼吸の呼気時に下降してくる脾臓に触れると
脾腫があります。

 

健康な人では、脾腫に触れることはありません。

 

打診は、右側臥位で第8肋間を上方から内下方に向かって打診し、
濁音に変化したところが、脾臓の上界です。

 

健常者は脾臓の上界は第8肋間中腋窩線にありますが、
上外方に偏移していれば脾腫を疑います。

 

ばち状指

 

ばち状指は、爪の付け根が盛り上がり、
付け根で作られる角度が正常では160度ですが、
ばち状指では180度を越えます。

 

正常の場合は、両方の爪を接触させたとき、
ひし形の隙間ができます。